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トップ製品情報 > ICP発光分光・質量分析(ICP-OES・ICP-MS) > 解説 > ICP質量分析装置(ICP-MS)の原理と応用

 ICP 分析

解説: ICP質量分析装置(ICP-MS)の原理と応用例

1. はじめに

ICP質量分析装置(高周波誘導結合質量分析装置、以下ICP-MS)は1980年はじめにHouk、Grayらによって発表されその数年後の1983年に製品化されて以来、約20年経過しており、現在様々な業界で幅広く普及されている。特に半導体業界での利用は多く、時代とともに要求が厳しくなる高純度物質の品質管理のための分析法として活用されている。また、環境試料中の微量の有害金属分析等への応用が期待され、特に最近は、環境分野における各種公定法の改正に伴い、環境基準値、排水基準値の低下に対応するためICP-MSが採用されている。

ICP-MSは次のような特長を有する。

  1. 高感度分析が可能。ほとんどの元素の検出下限値がpptからppqオ−ダ−である。
  2. 多元素同時分析が可能である。
  3. 定性、定量が迅速にできる。
  4. ダイナミックレンジが8桁と広い。
  5. 同位対比の測定が可能である。

2. ICP-MSの構成

ICP-MSは図1のようにイオン源(ICP)、サンプリングインターフェイス、イオンレンズ、質量分析計、検出器から構成される。

イオン源であるICPは質量分析のためのイオン化源としては理想的であり、多くの元素が90%以上イオン化する。ICP内で生成したイオンは、サンプリングインターフェイスを経て質量分析部に導かれる。サンプリングインターフェイス部はサンプリングコ−ン(オリフィス径0.5から1mm程度)とスキマーコーン(オリフィス径0.5から1mm程度)の2つの金属でできた円錐状の形をしたもので構成され、この両者の間はロータリーポンプにより約数百Paに排気される。サンプリングコーンとスキマーコーンを通して引き込まれたイオンは、イオンレンズによりその軌道を質量分析計へ収束される。イオンレンズ、質量分析部はタ−ボ分子ポンプによりそれぞれ10-3、10-4Paに排気される。質量分析計により質量選別されたイオンはイオン検出器により検出される。

3. 応用例

3-1 極微量濃度の分析

ICP-MSの問題点の一つに、目的元素と同じ質量数のイオンや分子イオンのスペクトルが重なり干渉を及ぼすスペクトル干渉がある。このスペクトル干渉を分類すると次のとおりになる。

  1. アルゴン起因の分子イオン(ArO、ArH、ArOH、ArN、ArCl、ArC、ArArなど)
  2. 試料中の主成分元素起因の分子イオン(CaO、CaOH、NaO、NaOHなど)
  3. 試料の液性が原因となる分子イオン(ClO、SS、NOなど)

特に1)は、プラズマガスであるアルゴン(Ar)が主要因になるため、どの試料においてもまんべんなく干渉を及ぼす。したがって、Ar分子イオンの干渉を受ける元素は、測定時にバックグランドが高い状態で測定することになり、極微量濃度の測定においては、非常に不利な状態になる。

主なAr分子イオン

表1にAr起因の分子イオンの影響を受ける主な元素を示す。特に、K、Ca、Feの元素に及ぼすAr分子イオンのレベルは、それぞれの元素の濃度に換算して数十ppbから数百ppbになり、この状態下でのpptオーダーの分析はほとんど不可能になる。そこで、Ar分子イオンの影響を受ける元素の極微量濃度の分析手法としてクールプラズマによる測定法がある。クールプラズマとはその名のとおり、通常のプラズマに比べ、温度の低いプラズマ状態を指す。クールプラズマの状態では、Ar分子イオンはできにくい状態になる。そのため、バックグランドが極力低くなる。その結果、検出下限が向上する。表2にクールプラズマ条件による検出下限値(DL)とバックグランド相当濃度(BEC)を示す。バックグランドのレベルが1ppt以下に低減できるため、pptオーダーの分析が可能になる。

クールプラズマによる検出下限とバックグランド

3-2 環境分析試料の測定例

河川水や湖沼水、海水といった環境試料には測定元素以外のマトリックス成分が多く含まれる。このマトリックス成分はICP-MSで測定を行う場合、いろいろな問題が発生する。その一つにはクールプラズマの説明で述べたスペクトル干渉がある。クールプラズマはアルゴン起因の分子イオンは低減できるが、試料中に含まれる元素の分子イオンは逆に多くなる。またマトリックスによる感度の減感作用が大きいため環境試料には事実上用いることができない。したがって別のアプローチを用いてスペクトル干渉を低減する必要がある。分子イオンには何種類かの形態があり、そのなかで特に酸化物の分子イオンの影響が大きい。酸化物イオンの生成は試料中の水(H2O)の酸素から酸化物イオンになる割合が大きい。したがって試料の水分の割合を減らすことによって酸化物の生成はかなり低くすることができる。また、プラズマ条件や真空部のサンプリングインターフェイスの形状などによっても酸化物の生成割合は大きく変わるため、これらを最適化することにより酸化物の生成を下げることができる。SPQ9000では、微少量ネブライザー(水分量を低下)、スプレーチャンバーの冷却(脱水効果)、環境分析試料用のプラズマトーチ(プラズマ条件を分子イオンができにくい状態にする)、環境分析試料用のコーン(分子イオンの生成を低くする)を用いることによりスペクトル干渉を少なく測定が可能になる。

表3に日本分析化学から販売されている標準河川水(JAC0031)の測定例を示す。

河川水の分析例

3-3 クロマトとの接続例

有害元素にはヒ素やクロム、臭素などのように化学形態によって毒性の異なるものがある。ICP-MSで測定する場合、トータルの濃度の情報しか得られないので毒性の大きさまではわからない。そこで最近では化学形態別に分析するためにイオンクロマト(以下IC)、液体クロマト(以下HPLC)といったクロマト装置と接続する手法が注目されている。この場合、ICP-MSはクロマト装置の検出器として活用され、クロマト装置単体のときに比べ高感度化を図ることが可能である。ここではICと接続して水道水中の臭素酸イオンと臭化物イオンを同時に分析した例を紹介する。

臭化物イオン自体には有害性はないが、水道水の消毒にオゾン処理を用いると副生成物として臭素酸イオンが生成される。この臭素酸イオンには有害性がある。そこで臭素が臭素酸イオンとしてどのくらい含まれているか判明することは重要である。ICはダイオネクス株式社製DX-500を用いた。

図4にICと接続したときの臭素酸イオンと臭化物イオンの測定結果を示す。

水道水中の臭素酸イオンと臭化物

また、表4には、IC単体で測定した場合(IC法)とICP-MSと接続したとき(本法)の検出下限を示す。

IC法とICP-MSと接続したときの検出下限

注入量を500μLにした場合ではICのみに比べ検出下限が20倍以上向上した。

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